奥出雲おろち号

友人の元を訪れていた先輩と松江駅で再合流し、8:50発のトロッコ列車「奥出雲おろち号」で出発する。


全車自由席のこの時点では、通勤帯ながらトロッコ車両ですら座席の半数、併結の一般車両に至っては数人といった状況。幸か不幸か、九州に近付く台風の影響で日差しは弱く、風は一層強いという絶好のトロッコ日和の中、宍道湖畔を行く。沿線の人々が物珍しそうな面持ちでこちらを見ている様子が何とも滑稽だ。



宍道から木次線に入る。何度乗っても味のある路線であろうからまた来たいとは思っていたが、まさか1年半後に来るとは思わなかった。w
流石に山陰本線とはワケが違い、狭い路盤を左右に曲がりながら進む。この時、沿線から迫り出した木立が窓のないトロッコの客室内に容赦なく襲いかかり、土産として虫を置き去って行く
しばらくはその虫を払ったりしていたが、じきにそれがもはや意味を成さない行為であると観念し、見て見ぬフリをする。オマケに小雨が降り出し、これまた窓のない客車に次々着弾する始末。実にワイルドだが、だからこそのトロッコだ。



木次からトロッコ車両が指定席となると、流石にこちらは満席になった。


同時にJRの職員が、ポケットティッシュやパズルなどを配りに来る。それも全乗客の半分ほどしか数がなかったが、対座席に座った方の好意で頂くことができた。
ここでアイスクリームや笹だんごの民間販売員も乗り込み、車内販売を始める。私はブルーベリー味のアイスを注文したが、牛乳本来の風味が濃厚にして、西日本有数の酪農どころの意地を見せ付けられた。

だんごの車内販売(日登〜下久野)



さて、指定券は備後落合まであるけど、このまま乗っていっても備後落合で次の芸備線まで2時間待ちを食うだけだ。ならばどこかで降りよう。



まぁ“どこか”と言いつつ、この時点で何の示し合わせなく2人とも亀嵩で降りたいと思ってたわけで。www




亀嵩に着く。



予約をすればこの駅の名物である出雲そばを列車に乗ったままで買い求められるため、これを受け取ろうとする人が次々に車外に500円玉を持った手を伸ばし、列車の到着にあわせてホームに出たそば屋の店主が商品を売り捌いていく。乗客もなかなかツウである。



まぁ下車して食う我々には及びませんがね。( ´_ゝ`)




ホテルの朝飯から3時間。更についさっきアイスも食ったが、扇屋のそばを前にして知った事ではない。(ぇ
初心者はベーシックに。我々は割子そばを注文する。


見た目はやや不格好だが、それも今や熟達した技を持つ2代目の打ったそば。余計なつなぎを使っていない証拠だ。そしてその期待通り、そば本来のザラっとした口ざわりが絶妙に残っている。
つゆは西日本では珍しい濃い口をそばの上に直にかける。薬味は始めから麺に載っているネギなどと、少々の唐辛子、それ以外はいらない。



食べ終わると、駅前をブラブラする。時折大型トラックの走る県道と、民家一軒の為の踏切。バス停では、我々と一緒に列車を降りた女子高生が、次のバスをかれこれ1時間近く待っている。
そんな田舎駅だが、昼時になると周辺地区は勿論、三成と横田から車で食べに来たと思われる人で満席に近くなった。これが地方の名物店のチカラなのだろうか。


ペットボトルのお茶を飲み干し、代わりに坂根に着くまでの予備の飲料水を入れて亀嵩を後にした。




2時間後の定期列車で出雲坂根に着くと、備後落合から折り返してきたおろち号が交換待ちで停まっていた。出雲横田以南が事実上の閉塞運転状態になっている現在では、滅多に見られない坂根での交換だが、おかげで駅は2倍混む。僅かの停車時間に、カメラとペットボトルを抱えた人がホームを駆けずり回り、列車や駅の撮影をしながら、空いた隙を見計らって延命水を汲みに行く。
私は、たまたま汲み場が空いていたので、予備の水を線路に捨てながら汲み場に走り、無事に確保。外気温からは想像のつかない冷たさだ。


しかしそれだけ人がいると何か起こるもので、撮影に夢中だった落合方面行きの乗客1人が乗り遅れた為、発車直後に列車を停めて*1乗せるといったハプニングも発生した。

*1:まだホームを離れていなかったので、運転士の誘導により混乱なく乗せた。