山田線最高地点から海抜0mへ

臨時快速「さんりくトレイン宮古」号は北上川の支流・中津川の細い流れに沿って登っていく。
ただでさえ並行する106急行バスに利用客の大半を取られているこの線区で、まして臨時快速ともなれば存在を知っている人すら少ないだろう。ほとんど団体客と“同業者”で座席の2割弱がやっと埋まっている状態だ。


列車は標高750mの山田線最高地点を過ぎ、200mも進まないうちに区界駅に停車する。上り快速リアスとの交換待ちの為に9分停車するが、申した通り乗客の大半が“同業者”、周囲に民家も疎らな高原の駅に人がぞろぞろ降りる降りる―。

  • 峠道を登ってくるキハ52系快速リアスを撮りに行く者
  • 駅員や乗務員と話し込むもの
  • 駅舎やホームでその場の空気を味わう者…

ちなみに私は、駅スタンプを捺したあと国道106号を横断し、国道越しに駅を撮影していた。W


ここから列車は閉伊川に沿って区界高原を緩やかに下り始める。天気が良ければ左に兜明神岳、右に早池峰山を見ることができるが、生憎の天気で上空は真っ白だった。



宮古北リアス線の1日券を買い、再び三鉄に。沿線のどこかの村で降りたてみたいのと、後続のさんりくレトロ号に乗ってみたい事から、途中下車駅に田野畑を選んだ。村役場から2km以上離れた「秘境駅」の要素充分な駅であり、駅舎内にカフェがあるから最悪避難場所として使える。
北山崎海岸にも行ってみたかったが、時間もバスもなく、タクシーで行くほどのカネもないので、漁港まで降りてみると、小さな酒屋や錆び付いた自販機など、田舎情緒たっぷりの集落があり、心が洗われる。


三陸縦貫鉄道建設が座礁したまま既存区間までもが廃止の危機に追い込まれ、危惧した地元自治体の出資により未完区間を連結し三陸鉄道として開業し、約10年間黒字経営を続けた歴史があるが、そのかつての未完区間内に田野畑村はあり、つい22年前までは宮古までですら通勤通学が困難な環境にあった。三鉄の列車の形をした水門は、そんな住民の悲願の達成を象徴するようであった。