3日目(松江〜出雲大社〜木次〜三次〜呉〜広島市内)

朝一で食事を摂り、出雲市へ。8:30出雲市駅発のバスで30分、大社に到着。参道入口が出雲駅伝のスタート地点。オツオリやマヤカや渡辺康幸を始めとする幾多のランナーがここを走ったんだなぁと、3人で陸上部員らしい事を思ってみたり。それより先に超変身コスプレイヤーとか神無月の巫女とか思い出してみたり。楽殿の大しめ縄に賽銭を挿そうとしたら、振動で既にささっていた賽銭がバラバラ落ちてきたり。本殿横で縁結び*1と学業成就のお守りを買おうと思ったら、それより安い諸願成就の木札があったので、ケチって欲張ってそっちを買ったり。

  • 勇壮かな奥出雲

来た道を宍道まで戻り、木次線のに乗り換える。ここから備後落合までの3時間が、個人的にはこの旅行のハイライトと言いたい。3連休の為か、こちらも観光客が多かった。
足掛け3日間お世話になった山陰本線に別れを告げて大きく左にカーブし、神話の河・斐伊川に寄り添ってなだらかに登り始める。
途中の木次で地元を降ろし、後ろに出雲横田から折り返し宍道行きとなる回送車両を連結する。この間10分ほどあるので、トイレを済ませて駅の外に出てみると、意外に栄えた町であるらしい事が判った。だが、その実列車は1日数本しか来ない。かつて幾多の赤字路線が廃止され、バス輸送に切り変わる寸前の主要駅周辺の様子に似ている。そう考えた時、ある種のタブーを想像せずには居られなかった。


出雲三成亀嵩*2あたりまで登ると、斐伊川の深い渓谷を縫うように、周りを緑一色に囲まれて走る区間が増えてくる。いよいよ木次線らしくなってきた所で、横田の町に入る。木次線沿線には観光に特に力を入れている自治体が多いようで、出雲横田の駅前も、バス・タクシー乗り場を兼ねたロータリーが整備され、観光案内所が隣接していた。



遂に、今では定期列車が1日3往復となってしまった区間、そして最もアトラクティブな区間に突入する。天気は快晴。早春の山陰の山間部では異例の好条件だ。窓から差す日で頭が暑くなるのも嬉しい悲鳴と言おうか。
先程の回送車両を横田に残し、キハ120型レールバスは2つ目の出雲坂根に近付く。ここで俄かに乗客の動きが慌しくなる。目的は2つ。この駅に湧き出る“延命水”を採る人と、その後すぐに始まる3段スイッチバックの様子を収める為のカメラ位置の確保をする人。もっとも、私のようにそれら両方をこなそうという欲張りも居る訳だが。


出雲坂根に3分の早着。しかし発車まで6分しかない。この間に沢山の人がペットボトルを抱えて延命水を汲みに来る。普段は地元の人の水汲み場になっている場所も、一たび列車が着けば乗客優先。お邪魔して汲ませてもらうことになるが、チョロチョロと出る湧き水に山の人が我先に群がる戦場と化す。運転手もそこは慣れたもので、発車間際の最後に汲んでいる人に「乗りますか」と声をかける。とは言え、横田〜備後落合は今では完全閉塞区間。交換列車が来ないから、発車が2〜3分遅れても対した支障はないとなれば気楽なものである。



13:24、出雲坂根を定発。やっと最初の闘いを終えたとホッとしたのも束の間、列車は3段スイッチバックに入る為に今までと逆方向に動き始める。水で重くなったペットボトルを置き、カメラを取ってすぐに配置に着く。私が選んだのは備後落合方の運転席後ろ。最初のスイッチバックは捨て、次の段階を狙う。運転室内の障害物が写り込むが、上手くすれば2本の線路と運転手が一度に写るポジションで、息を止めてシャッターを押す。



結果、最高の瞬間をモノにする。



列車は休む暇なく高低差170mの半ループ線を、制限速度25km/hで進む。“走る”というより“唸る”“喘ぐ”という感じで、木立を割ってひたすら登る。
何分乗っただろうか、ふと視界が開けた所で、山の中に絡みつくように国道54号線の奥出雲おろちループ*3三井野原大橋*4が見える。どこまで続くか知れない山の緑、おろちループの白、大橋の赤、空の青。それ以外には何もない。




これだ、俺が一番見たかった景色はこれだ。




運転手さんは車窓の説明をしながら速度を落として走ってくれる。まるで観光バスだ。乗客の多くは午後の陽光をも気にせず、西側に広がるこの情景を見ようとカーテンを開けた。それは実際にはほんの1分程度に過ぎなかったかもしれない。


三井野原駅をピークに、広島県に入ると同時に急な下り坂に転じる。ここは江の川水系に属する為、厳密には分水嶺ではない。
備後落合では芸備線の新見行と三次行が我々の到着を待っていた。到着するや否や、乗り換え列車の席を取るため走る人、人、人。とても山奥の無人駅に相応しくない光景を作りつつ、旅客は両列車にほぼ均等に分かれた。我々は三次行に乗ることにした。

  • 淡雪三姉妹。いや寧ろ稗田三姉妹

列車は三次盆地に向かってひたすら下り続ける。山を越え、神無月の巫女の里から朝霧の巫女の里へ。(ぇ  則ちゃんの里から愛ちゃんの里へ。(違


落合から75分ほどで三次に到着。そこで乗換え先の広島行き列車の席を取り、一旦駅の外に出て天裁が柚子っちのチャリに轢かれた駅前のターミナルを撮影。三姉妹の本拠地(?)・太歳神社にも足を伸ばしたかったが、時間がないので広島行き列車に戻る。

  • 友人の郷

どのくらい寝ただろうか、気付いたらもう広島市内に入っていた。もっとも、そこから広島駅まで45分はかかるので、もう一寝入り。途中の駅に、かつての寮の同室の母校があると聞いたので、それまでに起きて撮影。


広島で2泊3日経験をシェアした2日後に合宿先で再会する先輩達と別れ、呉線のホームに向かう。運良く、呉までノンストップの通勤快速が来たので乗車。実に81時間ぶりに乗った“電車”である。


美しい夕暮れの瀬戸内海を見ながら30分で、呉に到着する。



来たぞ! 松来未祐様&漏れの同室の故郷、呉に。



降りてぇ…  でも次の三原行を待っていたらムーンライト山陽に乗れなくなってしまう。
で、断念。(´・ω・`)


呉を出ると、いよいよ外は真っ暗になる。判ったのは、三原に近付いてまた海のそばを走っていたことくらいだ。と、人気のない国道沿いに「見晴らしの湯」なるものが。
『あんなとこ誰が使うんだよ、と思ったら結構客いるなぁ。三原市にあるから、みはらしの湯(寒』
なんて独りで考えているうちに三原に到着。この後、山陽本線でムーンライトに乗るため広島に戻るが、時間が余ったので可部線を乗り潰す。あれは通勤列車だから夜で景色が見辛くとも然して支障はない。可部駅ではホームの先端に立ち、ついこの前まで列車が走っていた、三段峡まで続く鉄路を眺めて帰りの列車に乗り込んだ。

*1:出雲大社と言えば、ねぇ

*2:本当はここで出雲そばを頂きたかったが、降りたが最後、次の列車までの貴重な待ち時間を考え断念

*3:この高低差は車にとってもきついので、道路をスパイラル状にして傾斜を軽減したもの

*4:ループの上端と三井野原集落との間の谷を跨ぐ橋